防災食糧難対策省力化米作り節水型乾田直播栽培の具体的栽培方法と成功事例 2025/4/17

surfer

2日前

節水型乾田直播栽培の具体的栽培方法と成功事例 #1

節水型乾田直播栽培は、水田での従来の稲作に比べて水使用量を大幅に削減し、直播（種を直接土にまく方法）によって労力やコストを抑える栽培方法です。以下に、具体的な栽培方法と成功事例を説明します。

具体的栽培方法

1. 土壌準備
– 乾田状態の田んぼを選び、土を十分に耕起して土壌をほぐします。土壌の排水性と保水性のバランスが重要です。
– 有機質肥料や堆肥を施し、土壌の肥沃度を高めます。直播では苗床がないため、初期生育を支える土壌環境が大切です。

2. 種まき
– 直播用の品種（例えば「ヒノヒカリ」や「コシヒカリ」など、直播に適した品種）を選び、種を均一にまきます。条播（条状にまく）や点播（一定間隔でまく）といった方法が一般的です。
– 種まき量は通常、10aあたり5～7kg程度が目安です。深さは1～2cm程度にし、土を軽く被せます。

3. 水管理（節水のポイント）
– 従来の水田栽培のように常に水を張るのではなく、必要最低限の灌水を行います。発芽期や生育初期には土が乾かないよう適度に水をかけますが、中干し（田を一時的に乾燥させる）を取り入れることで水使用量を抑えます。
– 雨水を活用し、灌水回数を減らす工夫も効果的です。

4. 雑草・害虫管理
– 直播では雑草が生えやすいため、除草剤の適切な使用や、雑草が生える前に土を軽く耕す「代かき代替作業」が有効です。
– 害虫に対しては、直播専用の防除剤を活用し、定期的な観察で早期対応を心がけます。

5. 追肥と管理
– 生育段階に応じて窒素肥料を中心に追肥を行い、稲の生育をサポートします。過剰な肥料は倒伏の原因となるため、適量を守ることが重要です。
– 倒伏防止のため、直播専用の生育調整剤を使用する場合もあります。

成功事例
– 岡山県の事例
岡山県では、節水型乾田直播栽培を導入した農家が水使用量を従来の約半分に抑え、10aあたりの収量を7～8俵（約420～480kg）確保しています。この地域では、直播に適した品種「朝日」を採用し、ドローンを使った種まきで均一性を高める技術を導入。労働時間の削減にも成功し、若手農家にも受け入れられています。また、灌水を最小限に抑えることで、水資源の少ない地域でも安定した生産が実現しています。

– 新潟県の事例
新潟県の一部地域では、乾田直播と精密農業を組み合わせた取り組みが行われています。土壌センサーや気象データを活用して、必要なタイミングで最小限の水と肥料を供給するシステムを導入。結果として、水使用量を約60%削減しながら、従来の移植栽培と同等の収量（10aあたり8俵以上）を達成しています。この事例では、地域の農協が技術支援を行い、農家間の情報共有が成功の鍵となりました。

まとめとポイント
節水型乾田直播栽培は、水資源の節約と労働力の効率化を両立できる方法として注目されています。成功の鍵は、直播に適した品種選び、土壌管理、雑草・害虫対策の徹底、そして地域の気候や水資源に合わせた柔軟な水管理です。上記の事例のように、技術の導入や地域での協力体制も大きな成果を上げる要因となっています。

節水型乾田直播栽培の具体的栽培方法と成功事例 #2

【１．乾田直播とは？】
・苗を作らず、耕起・整地した乾いた圃場に種子を直接まく栽培方式。
・移植・湛水期間が短いため、用水量を３～５割削減できることから「節水型」として注目。
・直播のうち「乾田直播」は湛水せずに播種する方式（湿田直播とは別）。

【２．節水型乾田直播の具体的手順】

① ほ場選定・整地
　・漏水の少ない改良田を優先。
　・暗渠排水があると作業適期が広がる。
　・レーザーレベラー等で高低差±1.5 cm以内に均平化 → 水深管理を容易に。

② 種子準備
　a）乾田用専用コート（鉄粉やポリマー＋除草剤・殺虫剤）を施し、鳥害・害虫・雑草対策。
　b）発芽優位を確保するため温湯消毒・浸種（32 ℃24 h等）後ただちに乾燥。
　c）使用種量：３～５ kg/10a（直播は多め）。

③ 播種（４月下旬～５月上旬）
　・ドリル播種機、畝立同時播種機を使用。
　・播種深さ 15〜25 mm、条間15 cm程度。
　・耕起後、鎮圧ローラーで密着 → 乾燥と鳥害を抑制。

④ 肥培管理
　・基肥一発型（被覆尿素＋リンカリ）を全面施用：8-9-8 kg/10aが目安。
　・多肥は倒伏・軟弱徒長の原因。追肥は幼穂形成期にドローン散布等で適量補填。

⑤ 水管理（節水の核心）
　1) 播種～２葉期：極力入水せず降雨利用。乾燥が続けば浅く散水（5 mm程度）。
　2) ２葉期→活着後：間断かんがい（２～３日湛水→落水）で根張り促進。
　3) 出穂後：浅水を維持し登熟を安定。黄熟期に落水し田面を乾かして収穫適期へ。
　⇒用水量は慣行移植の50～70％に。

⑥ 雑草・病害虫防除
　・播種前土壌処理剤（オキサジクロメホン＋プリティラクロールなど）＋播種同時粒剤散布が基本。
　・ノビエ３～4葉期以降は茎葉剤（ビスピリバックNa等）で仕上げ。
　・初期にコガネムシ類・ウンカ類が集中しやすいため、種子コート剤または粒剤同時施用が有効。

⑦ 倒伏対策
　・中生〜晩生で草丈の低い品種（ヒノヒカリ、ミズホチカラ、なつほのか等）を選ぶ。
　・肥料設計と成長調整剤（メプロニル等）を活用。適期中干しも重要。

⑧ 収穫
　・黄熟後７～10 日の落水乾田状態でコンバイン収穫。
　・もみ水分 22〜24％が好適。

【３．節水メカニズムと経済効果】
・移植用育苗・代かき・深水管理が不要 → 用水と燃油が減少。
・労働時間は10a当たり約６～７時間短縮（育苗/移植工程がゼロ）。
・資材費増（被覆肥料・コート種子）を含めても、慣行比で１万円/10a前後の所得向上例が多い。
・水田メタン発生量も３～５割低減との試算（NARO 2024）。

【４．成功事例】

① 熊本県菊池市（JA菊池）
　・導入面積55 ha、品種：ヒノヒカリ。
　・地下水位が深く漏水田のため直播を採用。
　・平均収量 550 kg/10a、用水量▲45％、労働時間▲28％。
　・収益＋14,000円/10a。直播３年目から品質等級１等比率90％超に安定。

② 三重県伊賀市・中山間乾田組合
　・ドリル播種＋ICT自動給水栓「WATARAS」。
・５年間平均：収量 570 kg/10a、低コスト栽培指標Aランク。
・年間水使用量は慣行の40％、農業用水路維持費も削減。

③ 滋賀県守山市「雨水貯留＋スプリンクラー乾田直播」
　・圃場脇に1,500 ㎥の雨水集水池を設置し、必要時だけスプリンクラー散水。
　・品種：みずかがみ。収量 630 kg/10a。
　・ほ場内CO₂排出量▲35％。琵琶湖流域の水資源保全モデルとして注目。

④ 北海道遠別町大規模法人「北辰アグリ」
　・畝立同時播種＋寒冷地短期湛水。
　・品種：ななつぼし。面積50 ha。
　・直播導入で播種～収穫までの作業機械化率100％、粗利益率15％向上。

⑤ 富山県黒部市「スマート水管理連携実証」
　・圃場センシング＋ドローン施肥。
　・水使用量▲52％、窒素流出▲30％、真夏の労働ピークの夜間見回りゼロ。
　・極端高温年でも等級１等率87％を確保。

【５．導入を成功させる７つの鍵】
1. 高低差±1.5 cm以内の均平化と漏水対策（畔シール、暗渠整備）
2. 播種期の土壌水分確保と鎮圧は「乾きすぎ・浮き播き」の防止策
3. コーティング種子＋初期一発剤で雑草競合を抑える
4. ICT間断かんがい（自動給排水栓・水位センサ）が節水効果を最大化
5. 倒伏に強い中晩生品種と保肥力マップに基づく施肥
6. 黄熟期の落水を徹底し、コンバイン収穫適期を逃さない
7. ３年程度の慣熟期間を見込み、収量・品質を段階的に安定させる

【６．参考文献・支援策】
・農研機構「改訂版乾田直播栽培マニュアル」2024
・農林水産省スマート農業実証PJ成果集（節水×直播編）2023
・各県農業試験場直播対応品種・除草体系一覧
・事業補助：うるおい農業H30〜（圃場水管理ICT導入）、環境保全型農業直接支払

節水型乾田直播は、水資源制約や労働力不足、脱炭素要請への具体的解となります。圃場条件と初期技術投入をクリアすれば、移植栽培と同等以上の収量・品質が十分狙えます。まずは10a〜1ha規模の試験導入から始め、成功事例のポイントを現地の土壌・気象条件に合わせてカスタマイズすることをお勧めします。